Tuesday, October 1, 2013

感染して進化する自己免疫の技

3歳半の娘の鼻がズルズル、咳コンコン。風邪の季節の到来だあ〜と思いながら油断したら、あっという間に風邪をひいてしまい、寝込みはしませんでしたが、久しぶりに3日ほど体調不良に見舞われました。目に見えないので実感が湧きませんが、ウイルスは常に私たちの周りに潜んでいて、侵入のチャンスを伺っています。この時期こそ、いっそうの警備強化で臨まなければなりません。

ところで、風邪の原因はウイルスであることをご存知の方は多いかと思いますが、ウイルスが身体に侵入すると、どのように悪さをして、私たちの免疫がどのように対戦するか、ご存知でしょうか? 菌よりもっと小さい微生物であるウイルスには、細胞がありません。ばい菌の場合は、体内に侵入すると人間の細胞を栄養にして細胞分裂し繁殖しますが、細胞を持たないウイルスは、人間の細胞の中に入り込み、人間の細胞の複製機能を乗っ取って、ウイルスを増殖させます。ということはどういうことか。「人間の細胞を乗っ取る」というポイントが大変重要です。まず、人間の細胞になりすましているために、警備に回っている白血球によるウイルス感染の発見が遅れます。菌の場合は、 誰の目にも不法侵入者であることが明らかなため、 体内を一番多く徘徊しているNeutrophilと呼ばれる白血球や粘膜などに常時張り付いて警備をしているマクロファージなどが、菌を発見し、速攻撃墜します。人間になりすましているウイルスの場合は、もう少し高度な組織的な戦術が必要になるのです。まず、人間になりすましたウイルスを発見したお手柄白血球が、リンパ球と呼ばれる白血球に知らせます。知らせを受けたリンパ球は、抗体を作り、ウイルスに抗体で印を付けて周り、リンパ球の特殊部隊であるキラーT細胞に撃墜させるのです。新種のウイルスに感染すると1-2週間寝込んだりするのは、この発見の遅れと抗体開発にかかる時間が原因なのです。組織的な戦闘期間は、体内の免疫作用による炎症が起こるため、鼻水、咳、発熱、悪寒、関節の痛みなどに見舞われますが、治らないからと症状を緩和する製薬などを服用すると、免疫が落ちてかえって風邪をこじらせることにもなりかねません。ましてやウイルス性の風邪に抗生物質(Antibiotics)を服用するなどは論外です。抗生物質は、ほとんどの場合、菌の細胞壁を破壊する物質で作られているので、細胞を持たないウイルスには細胞壁も当然なく、抗生物質は何の役にもたたないのです。それどころか、むやみに抗生物質を飲むと、体内の善玉菌が死滅して、悪玉菌の繁殖を許し、大腸炎などもっとやっかいな疾患を引き起こすことになりかねません。


風邪は未然に防ぐのが一番です。手洗いとうがいを徹底して、身体を冷やさないこと。ストレスを溜めないようにして、十分な睡眠で心身を休息させること。身体を温める根菜と魚中心の食事にし、免疫を下げる砂糖やアルコールは控えましょう。それでも風邪をひいてしまったら?実はそれもそれでOK!リンパ球にはメモリーB細胞という資料室があり、過去の不法侵入者の情報が保管されていて、同じ侵入者の再入を実に効率よく防止できるシステムになっています。風邪をひいてしまったら、今期の新型ウイルスの資料を入手して、資料室の情報を充実させているのだ。。。。と観念し、身体を休め、ビタミンC、A、亜鉛、水分を補給し、自己免疫が最大限の力を発揮できるよう応援しましょう。
(夕焼け新聞2013年10月掲載記事より)


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千賀子・ハーパー
自然医学(ナチュロパシー)を専門とするオレゴン州認定のファミリードクター。副作用をともなう製薬を極力さけ、身体にやさしい自然療法で自己治癒を促進し、心身ともに真の健康をめざす統合医療に取り組んでいます。糖尿病、心臓血管病、婦人病、神経痛、アレルギー、自律神経失調、ホルモンバランスなど、また定期検診や栄養指導など、日本語でお気軽にご相談ください。健康保険の適応あり。講演やワークショップの依頼も承っております。

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