Wednesday, November 12, 2014

「問題ある・なし」だけじゃない、血液検査のなかみ。数値をみれば未病を発見できる

血液検査の結果のレポートが届いたら、皆さんはどうされていますか?「問題ありません」と言われれば、特に気に留めず捨ててしまったり、どこにいったかもわからなくなっているかもしれませんね。私もかつて会社員で忙しい毎日を送っていた頃は、年一回の健康診断のマイクロバスがやってくると、ありがた迷惑(苦笑)。送られてきた結果もその辺にほったらかして、そのうちどこかへ消えてしまいました。

血液検査のレポートは、体内情報の宝庫

実は健康診断で行うごく一般的な簡単な血液検査で、ものすご〜く貴重な様々な体内の状況を知ることができます。なぜこれほど貴重な情報を医師は患者に説明しないのか。。。しぶしぶ健康診断を受けていた自分を棚に上げて、今となっては腹立たしい。例えば白血球数の正常値は、検査会社によって若干差はありますが3.8~10.8mcl。正常値がこれほど幅広いと3.8に近い人と10.8に近い人では同じ「正常」でも大差です。白血球は免疫部隊ですから、上限に近ければ近いほど体内で何か異変が起こっている可能性が高いのです。また過去の検査と比べて明らかに増加している場合も要注意ですね。血糖値も比較的正常値が広い検査です。正常値内であっても上限に近い人は、すでにインシュリン障害が起こっているといっても過言ではないでしょう。何だかいつも甘い物が食べたくなる、すぐにお腹が空くなどといった症状がある人は可能性大です。また、実際の血糖値は高いのに採血前の食事制限で血糖値が大きく低下する”隠れ高血糖”の人もいます。空腹時の血糖値だけみて「問題なし」の太鼓判を押されて安心していると大変です。血糖値は空腹時の数値だけでなく、過去3ヶ月の平均値HA1cと両方の数値を比較して判断する必要があります。血液検査は結果の詳しい説明こそが大事なのに、郵送で送られてくるレポートの内容はABC評価と一行ほどのおまけ解説。。。ならまだましな方で、中には数値の記載もないレポートも多々。はっきり言って、これでは健康診断の費用と労力の無駄遣い。お持ちのレポートに数値の記載がない場合、今すぐに病院に連絡して数値のレポートをもらうようにしましょう。

最低限やっておくべき検査
私のクリニックに健康診断に来てくださる患者さんには、特に症状がなくても最低限、以下の血液検査をお勧めしています。自分の正常値を知っておくことも大変重要だからです。

CBC with Diff = Complete Blood Count with Differential (血液一般と白血球分類)
CMP = Comprehensive Metabolic Panel with Fasting Glucose(肝・腎機能と空腹時の血糖値)
GGT(肝臓・胆嚢・胆官の健康をみる検査)
HA1c(過去3ヶ月の平均血糖値)
Lipid Panel (HDL, LDL, Triglyceride)(コレステロール総合だけでなく、悪玉LDL、善玉HDL、中性脂肪の各数値)
CRP high sensitivity(より精度の高い炎症マーカー)
Ferritin(貯蔵鉄)女性は貧血防止に。男性の場合は炎症マーカーとして
25 Hydroxy vitamin D(血中のビタミンD値)
TSH(過去に一度も検査されていない方は甲状腺機能の検査)
*上記の検査の他に個人別に必要な検査を追加します。

CBC with diff でみる自分の健康度
アメリカの場合、検査費用は保険を通した場合と自費でキャッシュで支払う場合とでは大きな差があり、キャッシュだと上記リストのようなごく一般的な検査は実はそれほど高額ではありません。検査会社によって違いますが、各種$10〜40程度でできます。例えばCBC with diffは白血球と赤血球の健康度を分析する、ごくごく一般的な検査。白血球(WBC)には様々な種類があるので、総数だけでなく白血球分類(with differential)を追加しても$15〜20程度の費用でできます。この安価な検査で自分の体内の多くの貴重な情報を得ることができるのです。例えば白血球の総数が上限に近い場合は、白血球分類を見てどの白血球が多いのかを確認します。好中球(Neutrophil)が多い場合は菌感染か、何らかの原因で身体が炎症性になっています。血圧や血糖値、コレステロール値が高い場合や、タバコやアルコールの摂取、またストレス過多でも上昇します。リンパ球(Lymphocyte)はウイルス感染やがん、好酸球(Eosinophil)と好塩基球(basophil)は寄生虫、アレルギー、カビ感染などで増加します。白血球はお巡りさんのような役割をしているわけですから、どちらかといえば下限に近い方が体内の”治安”がよいということになります。赤血球数(RBC)やヘモグロビンが下限に近い場合は、MCV(赤血球のサイズ)とMCHC(色)を確認し、これらの数値が低い場合は鉄分不足、逆にMCVが高い人はビタミンB不足の可能性が考えられます。RDWは赤血球のサイズのばらつきをみる数値。高い場合の最も一般的な原因は鉄分やビタミンB不足、また身体に炎症があると体内にフリーラジカルが多く発生し赤血球を傷つけるため、赤血球のライフサイクルが短くなっている可能性もあります。毎月の月経で血液を失う女性は特にFerritin(貯蔵鉄)の検査をお勧めしています。身体は上手く出来ていて血中の栄養素を一定に保つよう管理されているので、血中の鉄分(serum iron=血清鉄)では貧血の早期発見ができません。お財布のお金が血中の鉄分、銀行のお金が貯蔵鉄と考えれば解りやすいかと思います。血中の鉄が不足して銀行にいってもないと貧血になるわけです。CBCで赤血球数やヘモグロビンの低下が現れたら時は既に遅し。そうならないためにFerritinを調べ、必要に応じて鉄分を補給すれば貧血を未然に防ぐことができるのです。

病気は突然発症するものではないのです。血液検査もある日突然、正常値を超えるものではありません。私たちの身体には自己治癒のメカニズムが備わっています。毎日の無理がたたって健康のバランスを崩し始めると、そのバランスをなんとか保とうと体内で葛藤が始まります。これが未病です。明らかな自覚症状が出るまでに、また検査で異常が発見されるまでに、血液検査の数値の微妙な異変をキャッチすれば、病気を未然に防ぐことができます。健康診断の結果は「異常あり・なし」ではないのです。数値のレポートを時系列で比較して分析してみてください。自分の健康がどちらに向かっているのか、確認できます。
(夕焼け新聞2014年11月掲載記事より)

☆お持ちの血液検査の結果を分析します。電話・メール・スカイプでの医療相談をご利用ください。詳しくは、www.DrChikakoHarper.com まで。電話・メール・スカイプでの医療相談サービスは、通常の診療とは異なります。かかりつけの医師に通院されている方で、セカンドオピニオンを希望される方、自然療法を取り入れたい方、あるいは現在、Dr. Chikako Harperに通院頂いている方が対象です。ご了承ください。


千賀子・ハーパー(西脇)
自然医学(ナチュロパシー)を専門とするオレゴン州認定のファミリードクター。副作用をともなう製薬を極力さけ、身体にやさしい自然療法で自己治癒を促進し、心身ともに真の健康をめざす統合医療に取り組んでいます。糖尿病、心臓血管病、婦人病、神経痛、アトピー性皮膚炎、アレルギー、自律神経失調、ホルモンバランスなど、また定期検診や栄養指導など、日本語でお気軽にご相談ください。各種健康保険の適応あり。

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