Monday, June 4, 2018

あんなに仲よかったのに夫婦の仲がギクシャク。 それって産後クライシスの後遺症かも!


子供が小学校に上がり、だんだん手がかからなくなって来ると、相方の存在に気がつき始めます(笑)ところが、あら~?結婚当初はあんなにラブラブで優しかった夫が、子育てに奔走している間に、なんだか...その態度、その言葉、冷たくない?出産や育児を機に夫婦関係がギクシャクするケースを、日米に限らずよく耳にします。平成23年度に厚生労働省が日本の母子家庭を対象に行った調査によると、約3割が産後2年以内に離婚。子どもが35歳の時に離婚した家庭を含めると、その数は全体の半数を超えるそうです。うちもギクシャクしていた時期がありました(汗)。思い返せば、結婚当初のハネムーン期は、私も夫もお互いへの思いやりに溢れていました。お互いが喜ぶ顔が見たくて、喜ぶ言葉をかけ、喜ぶことをして。こういう幸せな時間は妊娠まで続き、妊娠を機に少しずつ変化をきたし、出産で一気に激変。右も左も分からないまま、手探りの子育てに突入し、仕事の両立に四苦八苦。人相も変わり、相手への思いやりどころじゃなくなってしまいました。お互い必死だから、言いたい放題。感情に任せて何を言ったかも覚えていないくらい(失笑)。出産や育児により、良好な夫婦関係が築けなくなり、最悪の場合離婚にまで至ってしまう夫婦関係の現象を「産後クライシス」と呼ぶのだそうです。ベネッセ次世代育成研究所が0610年にかけて288組の夫婦を対象に行った調査とNHKが行った約1200人へのアンケートの結果、子供の年齢が012歳と上がるにつれ、「妻・夫への愛情を実感する」割合が、妻・夫ともに減少する傾向が見られるそうです。特に妻側に急激な減少が見られ、その原因として「出産後の家事育児への非協力、理解不足、ねぎらいの言葉の不足」などがあげられるそうです。

夫の家事育児への非協力、理解不足はなぜ起こるのか?

ズバリ、妊娠と出産を経験していない人には、想像すら及ばない壮絶な身労と心労を妻だけが体験するからです。妊娠、出産、産後にかけて、妊婦は怒涛のホルモンジェットコースターに乗せられます。卵子と精子が結合して受精卵が生まれ、子宮膜に着床するとHCGというホルモンがものすごい勢いで分泌され、胎盤が作られます。この時期はつわりや体調不良に見舞われますが、やがて、この胎盤から女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロン、そしてDHEAというホルモンがものすごい勢いで分泌され、活力がみなぎります。その間も胎児はどんどん成長し、妊婦は10キロ以上も太ります。お産が近づくと狭い産道からの出産を可能にするため、プロゲステロンが骨盤の関節を緩め始めます。出産自体、まるでトラックに跳ねられたほどの肉体的衝撃で、骨盤の歪みなどが原因で腰痛になったりしますが、それだけでなく、出産と同時に胎盤も失うので、突然のホルモン減少による精神的、肉体的な衝撃も大きいのです。産後は、生まれてきた赤ちゃんにおっぱいをあげるために、今度は脳からプロラクチンというホルモンが放出され母乳を作り始めます。赤ちゃんがおっぱいを吸い始めると、脳からオキシトシンというホルモンが放出されて、どんどん母性本能に目覚めていきます。イタリアで行われた研究によると、プロラクチンには、子供以外の他者に対する敵対的感情を促す作用があり、母親を大胆不敵にすることが確認されています。つまり、子宮に受精卵を身ごもったその日から、私たちは何も知らされずに、この絶叫ホルモンジェットコースターに乗せられ、妻から妊婦へ、妊婦から母親へと、しかも近寄るもの全てに歯茎むき出しで威嚇する母ザルへと変貌を遂げていたのです。

ホルモンの変化で、凶暴化する妻

そういえば、産後しばらく、夫が帰ってくるのを待ち構えてイライラをぶちまけていました。産後疲れと、昼夜泣き続ける我が子のために寝不足な上、思うように母乳は出ないし、仕事も気になるし。そういう理由でイライラしていたのかと思っていましたが、冷静に思い返せば、あの抑えられないイライラと怒りは普通ではなかった。プロラクチンの仕業だったんですね。それに気づいたら、急に夫が気の毒に思えてきました。考えてみれば、子作りの夫の役割は射精だけで、体になんの変化も起こらない。ところが妻は、その日から日に日に豹変し、大胆不敵な母ザルへ変貌していきます。その変化を側で見ながら、訳もわからず恐怖に包まれ、置いてきぼりにされる夫。出産後、妻は敵対心むき出しに凶暴化しているから、怖くて育児や家事に手が出せない。だから、ますます仕事に没頭するという悪循環へ。ホルモンの影響で凶暴化していることに全く気づいていない妻は、産後の大変な時期に非協力だった夫に不信感を募らせ、やがてそれは恨みとなって心に深く根を下ろし、ついには離婚に至ることも。子供が生まれてから夫婦関係がギクシャクしている方は、冷静になって、あの頃を思い出して見てください。思い当たる節はありませんか?


子作りは夫婦の共同作業ですが、妊娠、出産、産後を通してけたたましいホルモンの増減で大きく変貌するのは妻だけ。これが、夫婦間に大きな乖離が生じる原因です。せっかく出会って好きになって結婚した夫婦です。妊娠・出産を通して、心身にどのような変化が、なぜ起こるのか、夫婦ともに事前に理解していれば、「産後クライシス」もお互いを思いやり、協力しあって乗り切ることができます。乗り切れば夫婦の絆はより深いものになるでしょう。

千賀子・ハーパー
自然医学(ナチュロパシー)を専門とするオレゴン州認定のファミリードクター。副作用をともなう製薬を極力さけ、身体にやさしい自然療法で心身ともに真の健康をめざす統合医療に取り組んでいます。糖尿病、心臓血管病、婦人病、神経痛、アトピー性皮膚炎、アレルギー、自律神経失調、ホルモンバランスなど、また定期検診、婦人科検診、栄養指導など、日本語でお気軽にご相談ください。各種健康保険の適応あり。

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